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ぎっくり腰



2025年3月3日

 

ぎっくり腰になってしまった。多分3、4年振りだ。ぎっくり腰は突然やってくるから怖い。ここのところ運動不足だったし、毎朝するはずのストレッチをサボっていたりしたから、やはり迂闊だったと言わざるを得ない。その朝、パソコンの画面をのぞこうとして中腰になったら、突然ガーンと大きなハンマーで腰を叩かれたような激痛がして、床に倒れた。しばらく芋虫のように這いずり回り、携帯電話をようやく手に取ると、別の部屋にいた妻に電話をして助けを求めた。


庭で採れた野菜
庭で採れた野菜


英語には「ぎっくり腰」にあたる言葉がないみたいだ。急性腰痛(acute back pain)とか、背中がつる(strained back)とか言うらしいが、どちらもぎっくり腰のような、言い得て妙な表現ではない。さりとて、オーストラリアにもぎっくり腰になる人はたくさんいるようで、整体医に行くとすぐに治療してくれた。2、3回通ったら、だいぶ軽快した。

 

ぎっくり腰という単語はないが、英語では、体に何か急激な異変や症状が起きることをエピソード(episode)という。心臓病でも鬱病でも胃痛でも肝炎でも、激症が起きればエピソードだ。ぎっくり腰も、エピソードだ。

 

ぎっくり腰になって1週間くらいは、普通に座ったり、寝返りを打ったり、車を運転したりできなかったから、家にこもって耐え難きを堪えていた。本でも読んで大人しくしていられれば良いのだが、満足に座ってもいられないから、のんびりもできない。立って読んだり、うつ伏せになって読んだりするが、どんな姿勢でも辛い。俳人の正岡子規は、脊椎カリエスで人生最後の数年は寝たきりになっても俳句を、しかも名句を、何百も詠んだのだからすごい。子規はお母さんと妹に介護をさせ、わがまま放題に食べたいものを食べたいだけ食べながら、その間に高浜虚子とか河東碧梧桐(かわひがしへきごどう)らの弟子の指導もした。スーパーマンと言わざるを得ない。一方、私はぎっくり腰くらいで何もできず、最後は立ったままネトフリで映画やテレビドラマを見ているという情けない状態だった。そういう辛い?1週間だったが、1週間も経つと不思議に軽快してくるから、ぎっくり腰というのもおかしな症状だ。


ズキーニの花
ズキーニの花


ぎっくり腰になってどこにも行けなくなると、途端に、どこでもいいから行きたくなる。近所のショッピングセンター、スーパー、カフェ、どこでもいいから行きたい。今度日本に帰ったら、どこへ行こうかなどとも考える。ああ、伊東に行きたい、温泉に入りたい、干物を食べたい、道明寺とか大福とかも食べたいなどと考え始めると、狂おしくなってくる。

 

そこで、腰を伸ばしながら、次の日本帰国のための飛行機のチケットを予約した。メルボルンから日本に帰るとなると、いろいろな航空会社がある。直行便は10時間だ。楽でいいがセールでもない限り値段が高い。私のような暇人は、安くて比較的楽な乗り換えルートを探す。乗り換えだと最低14時間はかかる。最近我が家ではロイヤル・ブルネイ航空というのが人気?で、うちの妻と息子はよくこれに乗る。ブルネイというのはマレーシアの近くの小さなイスラム教の国だ。私は乗ったことがなかったので、ネットで検索してみると、なるほど安い。そこで、すぐに予約してしまった。今度日本に帰るのは5月末だから、まだ3ヶ月近く先だ。でも途端にウキウキした気持ちになって、ぎっくり腰も少し楽になった。


豆の蔓と花
豆の蔓と花

ブルネイ航空はイスラム教の会社だから酒は一切出さないらしいが、酒を飲まない私には関係ない。直行ではないから、ブルネイで飛行機を乗り換えなくてはならないが、妻に言わせると、ブルネイ空港のラウンジは静かでのんびりできるから、数時間そこで過ごすのは悪くないという。50ドルで食べ放題、飲み放題(酒なし)だ。どっちみちメルボルンからだと、値段高めのJALとカンタス以外は何に乗ってもどこかでは乗り換えしなくてはならない。だからブルネイだって、どこだって同じだ。シドニー乗り換えは最悪だし、香港やシンガポールの空港は巨大なショッピングセンターのようで、店はたくさんあって良いのだが、かえって気疲れがする。ひっそりとしたブルネイ空港で、読書でもしながら静かに乗り換え時間を過ごす方が私には合っている気がする。


今年はトマトが不作だ
今年はトマトが不作だ

 

 

 

 

 
 
 

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