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メルボルンで医者通い

Updated: Dec 30, 2024

2021年4月25日


 オーストラリアでは、昨年コロナのパンデミックになってから医者に行く人の数が減って、癌や心臓病などの重病の発見や治療に遅れが生じていると度々の報道がありました。

 

感染を恐れるあまり家から出たがらない人たちが増え(特にお年寄り)、加えて病院やクリニックも感染対策のガードが固くなり、医者に行きにくくなったという人が多いのだと思われます。

 

じゃあ、私自身はどうだったかと振り返ってみると、昨年来メルボルンでもコロナ感染者が増え始めてロックダウンも2、3回あったにも関わらず、結構足繁く医者に通っています。来年還暦だし、それなりに医者に行く用事が近年は増えつつあるのが理由ですが、ずっと家で仕事をしているので、医者でも良いから外に出たいというのが私の本音です。その上、もしかして医者好きな性分なのかも。幸い、重い病気には今のところ無縁ですが。



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それで特にコロナ騒ぎになってから気がついたのですが、私は日本育ちで日本の医療に親しんで育ったにも関わらず、もう25年もオーストラリアにいるせいか、すっかりこちらの医療システムが心地よくなってしまったのです。

 

オーストラリアと日本では、医者にかかる方法がかなり違います。日本の開業医は「内科」、「整形外科」、「眼科」などと専門領域を看板に掲げているので、まずは自分で適当と思う医者へ足を運びますが、オーストラリアで最初に受診する医者は、大概はGP (general practitioner)、「一般開業医」と呼ばれる医者です。イギリスなどと一緒のシステムです。G Pはとりあえず全ての領域をカバーする医者で、どんな病気でも最初の見立てや血液検査などを行います。そこで治療できない領域の疾患や治療は、改めて専門医のところへ回されます。だから、逆に言えば専門医にいきなり行っても、G Pからの紹介状がなくては通常は診てもらえません。また、レントゲンや超音波も専門医なので、レントゲンが必要な場合は、G Pに行く前後にわざわざレントゲン診断のクリニックや病院へ行く必要があります。これはいささか面倒ですが。



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最近私は、整体院に行ってもなかなか五十肩が治らなかったのでG Pの診療を受けに行きました。そうしないと肩の超音波診断ができなかったからです。日本だったら整形外科などの専門医に一発行けばで終わるところ、オーストラリアだと整体院>G P>超音波診断クリニック>G P>病院で専門家の治療といった風に、複数箇所をうろうろすることになります。これも結構面倒です。

 

また私は、この間のブログにも書きましたが、歯のインプラントを入れました。これも普通の歯医者から紹介状をもらってからインプラントの歯医者に行き、歯のレントゲンは別のところで撮り、別の日にまたインプラント専門医に戻って歯を抜いて根元を入れてもらい、それが終わると今度は普通の歯科医でインプラントの入れ歯の部分を作って入れてもらい、最後に全部がちゃんとなっているかインプラントの歯医者で検査して終わりと、数段階に及ぶ治療になります。


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こちらの日系人の友達の中には、「そんな面倒臭いことは嫌だ!」と、タイのバンコクに飛び、1週間でインプラント治療をすっかり終えて帰ってきた人もいます。ついでに観光旅行もして、それでもオーストラリアより安く上がったという話でした。(インドだともっと安くて手軽だという噂も聞きました。)

 

そういうことを聞くと、ちょっと心が動くのですが、どうせコロナの今はどこへも行けないし、まあオーストラリアの面倒くさい治療方法、逆に言えば、慎重な治療システムでいいかと思ってしまいます。

 

昨年暮れには、耳の聞こえが悪くなったのでG Pへ行きました。そしたら 、でっかい耳垢が詰まっているせいだと言われました。医者は「デカくて、すぐには取れないから、来週改めて看護師さんを予約して取ってもらいなさい」と言いました。そこで看護師に予約を取ったら、「来週耳垢がきれいに取れるように、今夜から毎晩寝る前に耳に温めたオリーブ油を垂らすこと」と言われました。言われた通りにして翌週の治療にいどむと、今度は、担当の看護師さんは私の耳を覗いてから、「これは私では取れない」とか言い始め、結局私のかかりつけの G Pが登場して、特大な耳垢を取ってくれたのでした。(おかげで良く聞こえるようになりました。)

 

こんな風に、オーストラリアの医療は、あちこちたらい回しにされるようで、一筋縄でいかないところもあるのですが、それぞれは専門家で、みんな真摯に治療してくれるし、安心なことは安心です。もっと重病を経験した友達に聞くと、癌などの重病だと、公立の大きな病院でも超特急の特別待遇で診てくれるので、すごく安心だと皆口を揃えて言います。まあ、細かい問題はいろいろあるけど、全体としてはオーストラリアの医療システムはきっとちゃんと機能しているに違いないと考えます。

 

私としては、もう死ぬ時は、オーストラリアの医者たちに診てもらって大往生すればいいやと、躊躇なく考えられるようになりました。もう一つオーストラリアの医者に親しみを覚える理由は、医者とか看護師に移民系の人が多いことです。私がかかっている医者もそうで、G Pはイギリス出身とシンガポール出身、歯科医は南アフリカ系とインド系、インプラントの専門医はアイルランド系です。


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 とにかく、そういうことが心地良く感じられるのは、自分がすっかりオーストラリアの社会風土に馴れ親しんでいるということなのでしょう。コロナ禍になってから特に強くそう感じるようになったのは、みんなでこの状態を乗り切ろうと努力している様子が、医療も含めて、社会のあちこちに満ち溢れているからかもしれません。

 

日本という、文化が豊かで自然も美しい国に生まれ育ちながらも、人生の半ばからオーストラリアというダイナミックな多文化多民族社会の恩恵を受けて生活している自分が、いかに幸福であるか強く感じるこの頃です。

 
 
 

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